vol.054 タイ・バンコク (20) チュラルンコン大学
だだっ広いキャンパスには土曜日ではありましたが、まだ学生はかなり残っていました。ここはかなりまじめな学校らしく、男女とも制服の学生ばかりです。
男の学生は紺のズボンに白いシャツ、女の学生は紺のスカートに白いブラウスでした。ちょうど日本の高校生の夏服のようなものです。
私達の大学は立て看板と、ポスター、学生運動の集会があるかと思えば、訳の分からん映画の自主上映会があったり、長髪のヒッピーもどきがギター引いて歌
っていたり(フォークソング全盛期でしたから)の頃です。 ここの大学の構内は別世界でした。きっと出席も厳しくとられてるのだろうと想像はつきました。
さて誰かとお知り合いにならねばなりません。やはり男よりは女の子の方がいいに決まっています。しかしほとんどの女の子達は数人のグループで楽しそうに話しながら歩いています。
私の格好は、相も変わらずGパンにサファリジャケット、しかも長袖ですから腕まくりをしています。タイでも同じ様な格好の学生らしい人を見たことはあり
ますが、ほとんどが半袖のジャケットです。あまりさまには、なってないことは 自分でも十分承知していました。
でも、片手に英語のバンコック市内地図を持って、肩掛けのカメラバッグを持 ってきょろきょろしながら歩いていればたぶん少しは外国人旅行者らしくは見え
ていたと思いますし、そうであってほしかったのです。
何回か女の子のグループに話しかけようとしたのですが、どうにも話題の中に入っていくことは難しい雰囲気でした。私の姿を見るとフレンドリーに笑いかけてくれるでもなく、かといって完全に無視でもなく、敵意を持って見られるのでもなく。できたらこのグループのサークルの中には入って欲しくないやんわりとした拒絶に、私は思えました。自分に自身と体験がもっとあれば、乗り越えられる壁ではあったでしょうがこの時はすれ違うことしかできませんでした。
学生とさえ話し合うことができないとしたら、「無銭旅行」へ出かけてきた価値が半減してしまいます。今日は必ず、現地の人とふれあわなければいけないノルマが私にはありました。台湾の港に到着してから香港、タイと回ってきたのですが、旅行者同士、特に日本人旅行者とはたくさん話したのですが、現地の普通の人とはまだ、ほとんど話していません。
ノルマを感じたときから軽い緊張を覚え始めました。アドレナリンが出始めたようです。
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