vol.026 台湾 (4)
私の全財産入った腹巻きは、枕元にたたんである服の下に入れてあります。女の子とは片言の日本語で少し話しましたが、お話しするのが今日の目的ではありません。
狭い部屋の中で抱き合ってはみました。さっきの元気が嘘のように駄目なのです。田島から金借りたときは、急にむらむらきたのですが、今はあきません!
女の子、好みではあったのですが、マグロのようにでんと寝られた日には、一度萎えてしまうと復活がなかなか大変です。こんな時言葉が少しでも通じればまだましでしょうが、ほとんどお互いが片言ですし、私も百戦錬磨というわけではなく、日本ではやったことがないわけではないむにゃむにゃ状態ですからすごく困りました。
時間だけは無情に過ぎていきます。最初はちょっと乗りがいいかなくらいの状態だった女の子も、ふてくされモード一歩手前です。
必死で想像しました。日本で日常的に見ていたエロ映画、天六の東洋劇場のストリップ、中学生の修学旅行の時の覗き、高校の時は向かいの旅館の....。
一瞬はいいのです。一瞬だけは。
仕方ない、見送りに来てくれた今田のブーツ姿を思い浮かべました。うん、これは良かったです。別に私、ブーツのフェチではありませんでしたが、鈍くさい女の子より、ぱしっと決まったファッションの女の子を思い浮かべた方が元気に
なります。やった今度はがんばれそうです。
「オワリ、オワリ、ジカンオワリ」
なんだって、まだ何も終わってないよ。体を起こしながら、冷たく女の子繰り返します。
「オワリ、オワリ。」
お金追加すれば、時間は延長できますが、インド用の滞在費を清水の舞台から飛び降りる覚悟で使ったのです。清水の舞台は一回こっきりです。
待合室に行ってみると、まだ田島も、中島もでてきていません。お茶飲みなが ら五分ほど待ちました。
「早かったやんけ、どないだ」
田島、待合室のでてくるなりそう言いました。横にいる女の子も田島も顔が上気して目が潤んでいます。中島も同じ様な顔をしてすぐでてきました。くっそー、俺だけ駄目だったようです。
私にもプライド、意地という物はあります。人一倍あります。
「おう、なかなかやで」
田島はまだ許せるとして、中島、おまえまで何で!左足どぶから引っ張り上げ てやったのは俺やで。でも、なんにもいえません。言えばもっと私惨めになります。ホテルへ帰る途中、彼らの後ろ姿はまるでスキップしてるようでした。
その夜彼らはベッドにはいるとすぐイビキをかいて熟睡です。私は、ますます目が覚めてきて分身もますます元気になってきます。ほんの2時間前にそうなってくれていたらすごくありがたかったのに。もう遅いです。
その日の夜は、今田さんのブーツ姿が、おかずでした。すんません今田さん、手くらいしか握ったことなかったですが、想像させていただきました。想像だけはただですし、現物よりよけい興奮できる面もありますし。
ほかの2人に気づかれないよう神経は使いました。結局、必要なかったようです。2人とも高いびきでの熟睡でしたから。
すべて終わったあと、左の手のひらにこびりついたちり紙の(当時はティッシュ等のしゃれた物は一般的ではありません。)切れ端を右手の爪で剥がしながら、シミだらけの天井を見てボーとしてる田森かな。(字余り)
体がだるい!
金を浪費した後悔もありましたが、関西汽船の中で出発初日の真夜中に感じたインドへの不安がまた首をもたげてきたようです。
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