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田森くんは西へ Index page へ

vol.002 '70 大阪万国博 (2)

 

2月、3月の万博開幕早々は、土日と祝日を除けばまだ和やかなものでした。  

私達も残業があるわけでなく、自分の勤務時間が終わると万博の会場をぶらぶらしました。もうたぶん時効ですから正直に言いますが、最初の2,3回はちゃんと入場券を買って入ったのですが、慣れてくるに従ってスタッフ用の出入り口を開けてもらって出入りするようになりました。人によっては、万博会場内のアルバイトをや ってる友人が休みの時彼の身分証を借りて中にはいるのもいましたが私達はそう面倒なことはしませんでした。

万博の電車の駅と会場のゲートは200〜300mぐらいしか離れていません。  
あさの早番などやってると、ゲートの係り員などとも自然と顔見知りになるではないですか、昼間と違ってお客さんが来る前の会場 などスタッフしかいませんしお隣さんですから。必ずこういうイベントでアルバイトが多いときには、話をあちこちに付けてくる調整役の人間が出現します。彼はまずゲートの女の子と話を付けます、 次にはその横で見張ってるガードマン、さらにゲートを入ってすぐの所で店を出してる飲み物スタンドのねーちゃん、それは見事なものでした。私など、ただ唖然としてるだけで、その横で彼のコネクションはあっと言う間に出来上がりました。  

こう書いてくるとただ顔見知りになっただけで、強力なコネクションが出来上がったような印象を受けますがそんなことはどの世界でもあり得ません。きっちり彼はギブアンドテイクの関係を作り上げたのです。  
まずゲートの女の子、出勤してくるとき一番安い区間の切符を買って万博会場へ向かいます。万博駅には顔見知りのアルバイトがいます。彼はその安い切符をもらってそのまま彼女を通します。(本当は追加料金をもらうところですが)彼女が帰るときには、梅田とか、谷町から万博駅までの切符をとって置いて渡します、その切符 は梅田から万博駅まで乗れますが、逆に梅田から我孫子の方へも同じだけの距離は行ってもかまわないわけです。実際には梅田からの切符は、逆に行くとなると天王寺辺りまでしかいけなかったように思います。実際に我孫子から通勤してる子ならば、難波辺りから万博駅までの切符をとっておけばいいわけです。  

大阪の学生さんで、某大学の商学部の方はなんて頭の回転が働くんでしょう。 ゲートを押さえたら、今度は食い物です。同じようにスタンドの女の子へも当たりをつけておきます。これでソフトクリームとかコーラはただです。女の子と食い物が手にはいると、ガードマンなどいちころです。スタンドの子に、このガードマン来たらあんじょうたのんまっさと言っておけばガードマンもこっちの味方です。  

切符の方は毎日だとかなりの金額になりますが、食べ物はそうはいきません。チーフがいるときは出来ないわけですし、大量には短期間に無理です。 ただでもらえる量などたかがしれています。自分で払っても払える金額です。しかし、顔が利いてただでもらえると言うことはなんと心地いいことでしょう。  
たった150円位のものが1000円か3000円位の価値のものになってしまうのです。たぶんそれ以上の価値はあったでしょう。 しかも女の子が、「あ、何々さんちょと待っててね」と言いながら後でコーラとかソフトクリームをくれるのですから。  

商学部は、もっと頭が回転しました。ガードマンやってる学生とか若いのには切符は絶対渡さなかったのです。彼らには、スタンドの飲み物とソフトクリームしか渡しませんでした。それで十分でしたし、たまたまマジな学生が、ガードマンのチーフにぽろっと漏らす危険がなくなるわけです。  

スタンドの女の子は、まずこんな仕組みをガードマンに話すはずありません。ゲートの女の子も、切符はもらえるはソフトクリームはもらえるはで自分に損になることは一つもありません。  

そして商学部の彼は、ちゃんとうまくやってくれる女の子をたくさんの中から選ぶ天賦の才能がありました。(誰にでも持ちかけたら、必ず偉いさんに漏れます)私は、口の堅いパシリとしては天性の才能がありました。