トラベルメイト Top page へ戻る

トラベルメイト片山くんが行く

<<前のページ  次のページ>>

  1. 【 片山くんが行く(2) 】

     旅行会社はこの頃はほとんどが国内の鉄道の切符とか団体旅行が中心で海外も一応はパッケージのパンフレットは置いてはありましたがそうそう売れる商品ではなかったようです。申し込んだとき担当になったのは若い女の子の係り員で、海外旅行に関しては慣れてないなという感じを受けました。私自身も海外は初めてですし、係り員が慣れてないなと言う感じを受けたとしても、後から考えてみればそうだな程度で比較する経験が全くないわけですからさほど気にもとめませんでした。

     パスポートは旅行会社に代書を頼むと結構な金額を取られるしそう忙しくもなかったので自分で申請することにしました。都庁の旅券申請課へ必要書類をそろえて出向き申請書類を書き込んで申請の窓口に並びました。各窓口にはそれぞれ20人弱の人が並んでおりすぐ申請が終わる人もいればなにやらごたごたして結局申請書類不足か、申請書の書き方の間違いでもう一度何日か後に書類を完全にしてからという人もいました。

     順番が回って来るにつれ少し緊張して始めました。パスポートを申請するんですからパスポートを。これまで、こういう公的なところで書類の申請などしたことはありませんのでちょっとではありますが場違いな雰囲気は感じました。ならびながらもう一度、書類を読み直してみます。添付書類は完璧だし、写真もある、申請書もさっき3回見直したし、不安があるとしたら銀行の残高証明書。

     当時は実際に旅行するためのお金を持っているかをお役所が心配してくれていました。これは渡航能力証明書といって、銀行の「残高証明書」か旅行会社から発行してもらう「旅行引き受け書」が必要でした。実際新宿の旅行会社に全額ではないけども申込金を払って契約は終わっていたのですが、「旅行引き受け書」を発行してもらうだけで¥2,000.だか¥3,000.の手数料が必要でした。¥2,000.なんて一日分か一日半分のアルバイト料に相当するじゃないですか。とんでもない話です。申込金3万円払ったとはいえプウタロウしながらこつこつ貯めたお金が貯金通帳に入っています。大枚15万円くらい有りました。たぶん証明書としては足らないだろうから友人に10万円借りて合計で25万円くらいにしておきました。これで一応はぎりぎりですがつじつまは合います。

     シベリア回りヨーロッパ往復で22万円くらい、預金から引けば後三万円残ります。前金3万円旅行会社に入れてるのでこれもまるまる旅行費用に残るので滞在費6万円。色々な本を参考にして計算してみると十分1ヶ月分の滞在費になります。今はまだ5月出発まで3ヶ月弱はあります。幸い自宅でぷらぷらしてる身なので食住は経費不要です。ちょっとの間ですが、家に食費の名目でお金を入れたこともあったのですが、今は非常事態、親に少し泣いてもらうことにすれば 少なくとも5,6万円はこれから貯まりそうです。

     私は完璧です。5人ほど前の学生、残高が旅行先に比べ少なすぎるから、残高証明を取り直すか、渡航先を変更するかどっちかにしなさいと文句を言われていました。結局書類を取り直すか申請書を書き直すかしなければならないため後日再申請になったようです。 やっと私の番が回ってきました。自信を持って申請書をカウンターに出しました。係り員はちょっと神経質そうな30才台のやせた男性でした 。

     私 「お願いします」

     係り員 「えーと。..........」

    やな沈黙です。係り員、申請書と銀行の残高証明書を見比べています。

     係り員 「今回の旅行何カ国行くつもりですか?」

     私 「エーとそこに丸つけたとおりで何カ国かは数えていませんが、1ヶ月ちょっとで回れるだけ回るつもりですが」

     係り員 「ヨーロッパまで往復航空券だけでも40万くらいしますでしょう、それ以上に渡航先はヨーロッパ全部とアメリカとアフリカの一部も丸がつけて有るじゃないですか。どうやっても無理です。」

     そうつっこまれるのは承知の上です。こちとら、シベリア回りの申し込みはすんでいます。片道だけですけども。

    <<前のページ  次のページ>>

↑ページ最上部