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【 片山くんが行く（１） 】
私が海外旅行に出かけたのは、１９７１年の８月のことでした。なぜ海外旅行に出かけたかと言えば一言ではいえません。今から３０年近く前のこの頃はヨーロッパに個人旅行するだけで探検冒険の２文字がついてきた時です。私は元来そう国際派ではありませんでした。むしろ一緒に出発した、河本君の方が英語大好き少年でしたし、実際彼の方が海外旅行に行くぜと名乗りを上げていたのです。
最初はあまり乗り気ではなかったのですが、もう一人の友人がアメリカへ貨客船で渡り１年近く旅行して最近帰ったばかりで彼の体験談を聞くうち、やはり出なくってはいかんかなと思い始めたのです。彼は船で２週間ほどかけて太平洋を横断してロスだったかシアトルだったかに到着、現地で働きながら１年ほどアメリカを旅行したのです。
やっと二十歳過ぎたばかりの私にとって海外はすごくまぶしい対象でした。そこへ友人の旅行の誘いに、実際のアメリカ体験記これはもう出発するしか有りません。１９７０年はかなりにぎやかな年でした。７０年安保、大阪の万国博覧会、そして次の年が７１年です。
私達は、８月初旬に出発日を決めました。予定は１０年間、何の当てがあるわけではありませんが１０年と決めたのです。一度海外旅行にでて日本に帰国した後は二度目があるとは決して思えない頃でした。だから一度でたら１０年は旅行しようと考えたのです。
行く先はヨーロッパでした。アメリカは日本人にはなかなかビザがおりない国でしたので、出発前の書類手続きで消耗してしまうのと安い交通機関がありませんでした。残るのはヨーロッパしか有りません。
この頃安くヨーロッパに行くには二通りの方法がありました。一つは横浜からナホトカ、モスクワ経由ヘルシンキへ抜けるルート、もう一つは船で横浜／香港／バンコック／サイゴンと東南アジア各国に寄港しながらフランスのマルセイユまで行く船。
料金と必要日程で比べるとモスクワ周りの方がだいぶ有利です。５月はじめ、新宿の旅行会社にモスクワ周りのコースを申し込みました。３万円の申込金を払い旅行手続きはスタートしました。
片山くんがヨーロッパへ出かけた１９７１年、インドへ出かけていった田森くんがいます。インドはこの頃ヨーロッパとかアメリカからのヒッピーと呼ばれる旅行者が全盛の頃でした。ビートルズが一番パワフルだったのもこの頃です。
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