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【 片山くんが行く(36) 】
河本とっさに身構えて後ずさりしました。彼は棒を持っていればそれなりに強力なのですが素手ではナイフに勝てません。私の出番が来たようです。
リュックから出してあったヌンチャクを手にとって立ち上がりました。河本も後ろの私の動きを察して横に素早く動きました。金髪B君目標が突然変わって少しびっくりしたようです。目の前にいた背高のっぽが横にサイドステップしたら、後ろに妙な木ぎれを持ったがっしりした体格の男が身構えていたのですから。
私はちょっとずつ間合いを詰めました。少しでも武道をやったことのある人とか喧嘩慣れしてる人は良くわかると思いますが、実際の試合とか喧嘩の時に相手と相対したときに感じる、相手の大きさは必ずしも肉体的な体の大小ではありません。(もっともあいてが190CM筋肉質のようなときは、肉体的大小がそのままプレッシャーになります)
このとき相手に感じたのは、ぴりぴりした殺気ではなく、いったん胸ぐらつかんで引きずり回してみる、その後にどうするか決める様な儀礼的な脅しでした。
用心に越したことはありません。手の甲を上からはたいて返す攻撃で脇腹か太股をねらうことにしました。相手も黄色いのがナイフ出せばおびえると思っていたのが、妙な物を持って中腰で近づいてきます。目がだんだんマジになってくるのがわかります。しかし私の方を一点集中で見つめるのではなく、ちらちら金髪Aの方を見ています。こりゃ本気でやるつもり無いな、私はそう見て取りました。
相手との間合いはじりじり迫っています。間合いぎりぎりまで来ました、攻撃か、引くか、止まるか決断しなければなりません。相手の目にはとまどいがありますが、怯えはありません。
仕方有りません、攻撃です。でもまだ相手にこちらへの攻撃の兆候が見られません。多分脅しのつもりが、思いがけない反撃でどうしようか迷ってる状態でしょう。私はいったん止まりました。
間合いを詰めずに、左右に体をちょっと振ってみました。B君前に出てきません。それどころか、後ずさりを始めました。それで私の方にはずいぶん余裕が出来ました。ちょっとパフォーマンスをやってみることにしました。
それまで片手でヌンチャクの棒を二本握っていたのですが片方の棒を振り子のように前に投げ出しました。片方の棒は下から放物線を描いて、B君のナイフの先をかすめ、また私の右手の中に戻ってきました。 それは一瞬のうちに終わりました。「ヒュン」と言う音と「パチーン」とはじけるような音が部屋に響きました。
B君うろたえました、相手が30cmくらいの棒を手に持ってると思っていたら、視界の下からそれがヒュンとのびてきてまた相手の手の中に戻ったのです。
少し間合いを詰めてみました、多分彼2歩以上下がるはずです。前に出てくれば、今度は威嚇ではなくナイフをはたき落とすつもりでした。ヌンチャクで手の甲をはたかれた日にゃー、いたいよー、3日間は物が握れないでしょう。骨にもひびが入るかもしれません。
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