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【 片山くんが行く(31) 】
私「昼間の仕草が、少しおかしいとは思ってたけどね。」
河本「明日からなんか理由つけて、またYHか安宿へ移るか」
私「移ってもいいけど、お金がな、ここならただだし」
結論は出ません、オーレくんは良さそうな人だし今まで私らに言い寄ったこともありません。仕事場でも特に変わった行動をするわけでもありません。ただ今日彼がメイクして町に出かけただけのことでしか有りません。
私「人を外見だけで見ちゃいけないしな」
河本「そうだよな、あいついい奴だし、ちょっといい加減なとこはあるけどな」
結局2,3日様子を見ることにしました。せっかくただで泊まれるところを出たくはないと言うのが私達の本音でした。金銭的に言えば、夕方のビールの楽しみをやめれば安宿かYHに十分泊まれる経費は出るわけですが、そんなことは今更したくありません。
一応用心のため、ぬんちゃくはリュックのサイドのポケットに入れ直しました。いざというときすぐ抜けるようにして置いたのです。本当は寝袋の中に入れておくのがいいのですが、もしオーレくんに見つかったらいかにも用心しているみたいで悪いじゃないですか、中途半端ではありましたがリュックのポケットに入れておくのが一番と判断しました。
その日真夜中になって彼は帰ってきたみたいです、なにも起こりませんでした。それから、週末になると彼はメイクして出かけました。それだからと言って私達に対しての態度が変わるわけではないし淡々とひにちが過ぎていきました。
彼がホモセクシャルだったのか、ただおしゃれな感覚でメイクしていたのか、女装の趣味があったのか解りませんが、ただ一つ私達にはルームメイトである以外なんの興味も示さなかったのだけは事実です。拍子抜けしました。意気込んで貞操の危機とまで思った私達はなんだったのでしょう。
当たり前のことを一つ学びました。男が化粧したからといってここでは即ホモではない、もしそうであっても彼にも好みがあり男性なら誰でもおそったりする事はない、(そうでない人も希にいるようですが、いわゆる正常とされる男でも女と見ると見境のない人もいるわけですからおあいこです。)、ただ単純に好みが違うだけであるらしい。
彼は本当にいい人でしたから。
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