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トラベルメイト片山くんが行く

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  1. 【 片山くんが行く(18) 】

     明日からは、少し目標が出来ました。ホテルってのはちょっと近寄りがたいじゃないですか、今までは一件も回ってはいません。くだんのイタリア人に聞くと、彼の働いていたホテルでは日本人はいなかったけれど、他のホテルで皿洗いとか掃除をしてる日本人はいたとのこと、急に未来は明るくなってきました。

     さすがに三日目はYHに泊まる勇気は持ち合わせていませんでした。また野宿に切り替えました。今度は町中の公園では無く目先を変えて、コペンハーゲン大学の敷地にしました。何かと学生がいるところは、この手の旅行に便利ではないですか。大学食堂も使えるし。もう食パンと牛乳の定食は見るのも嫌になってきました。でて来るげっぷも、トイレででてくるものも、体臭さえ牛乳臭くなったような気になってました。げっぷが色んな種類の食べ物の味であるのは本当に幸せです。食べる楽しみがない生活は気分がドヨーンとしてよけい同じ味のげっぷとため息がでてきます。

     寝るところの料金を節約するなら、せめて食い物だけはまともに近いものを食べることにしました。2人併せて所持金は100$を切りましたが、なに、多分8月中はコペン滞在できますでしょう。キャッシュはこれだけですがいざとなればカメラを売れば数日間は大丈夫です。もしそこまで行って、まだ仕事が決まらなかったとしたら、大見えきって日本をでた手前、金送れとはいえないし、一ヶ月もまだたってないわけですから格好が悪いことこの上もありません。日本へ帰ろうにも切符はありません。

     私も、河本もお金が無くなった時のことは考えましたが、考えても解決にはならないわけで、しかしいつもこの頃は頭の中に、こいつは常駐していました。2人とも、妙に明るく騒げるときと、無口になってボーとするときと両極端を繰り返していました。

     どこへ行っても「ソーリー」「ソーリー」「ソーリー」。8月も終わり頃になってくると、公園で夕方吹いてくる風も涼しくなってきます。YHにはもう泊まれる予算はありません。食事は、唯一の楽しみになってきてました。

     あとこのブロックの二件のレストランを回ったら食事にしよう。「ソーリー」、後一件です。「ソーリー」、やっと今日のノルマは終わりました。仕事と違って、仕事探しはノルマが終わっても、何の金銭的な報酬もありません。

     また明日ドル札を両替せねばなりません。10$を替えて70クローネちょっと、それが3日ほどでなくなってしまいます。それを5日とか一週間に延ばすことは出来ますが、食パンと牛乳のげっぷはもういやです。食べ物だけが、私たちへのご褒美でした。今日も朝はがんばった、今日も一日がんばった、今日は一日がんばるぞ、そのときに待ってるものが食パンと牛乳ではあまりにも私たちかわいそうです。

     使った分だけお金は減っていきます。多分「今日も朝はがんばった」のご褒美が無くなるでしょう。次は、「今日は一日がんばるぞ」のご褒美が無くなります。そうなったときは、「今日は一日がんばった」用のご褒美が多分、食パンと牛乳になるでしょう。それも駄目になったときは、黒パンと水かもしれません。

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