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【 片山くんが行く(8) 】
一寝入りをして起きるとモスクワの空港でした。いったん航空機を降りて待合室で待たされました。多分お昼頃だったと思います。日本を出発したのがお昼頃でしたから、気分的には24時間過ぎた感じでしたが体が何かおかしかったです。多分時差のせいでしょうが、実際に飛んだ飛行時間は、うーん何時間になるのでしょう。いまだかって面倒で時差の計算はよくわかりません、からだが今昼間じゃないよと主張しておりました。
飛行機の中で飲んだせいかトイレに行きたくなりました。便器に近づいて用を足そうとしてぎょっとなりました。届かない、普通便器は腰よりしたに位置します。どう見てもへその辺りに便器が来ます。この位置ですと最初は問題ないのですが、終わる頃には大変なことになります。周りを見渡しました。もっと低い便器はないか探しました。ありません、同じ高さのものしかありません。考えました、どう考えても身長が足りません。
もこうなったら正面からではなく横から攻めるしかありません。便器の横に体をずらし壁に片足をかけ、つま先立ちになれば何んとか腰よりしたに便器が来ます。捕まるところは便器の上の水道のパイプしかありません。最初のカルチャーショックはモスクワ空港のトイレで来ました。私はこのとき蝉になりました。
モスクワからは数時間でコペンハーゲンに到着しました。空港では荷物の受け取り方から、乗り継ぎわからないことだらけでした。うろうろしてるうち、私たちの最終目的地はそういえばコペンハーゲンだったことを思い出しました。 私「おい、河本ここコペンハーゲンだよな」
河本「そうだよ」
私「最初は、ヘルシンキからコペンハーゲンに行く予定だったよな 」
河本「そうだそうだ、これから無理してヘルシンキに行くこともないよな」
当時ヨーロッパでのアルバイトの本場はデンマークかスウェーデンでした。わざわざ田舎のヘルシンキに行くこともないわけです。この頃の旅行記にはスウェーデンで働いたとよく書いてありました。私たちが最初の目的地をヘルシンキにしたのは、モスクワ経由のコースでヘルシンキが一番安かったからで、最終的にはストックホルムかコペンハーゲンに行くつもりにしていました。たまたま、出発前の旅行会社のミスで飛行機で飛ぶことになり、ヘルシンキに行くにはコペンハーゲンを通らねばいけなかったのです。
やはりコペンで降りることにしました。係員をつかまえて説明するのですがうまく通じません。そうこうするうち日本語が片言分かる見上げるような大男の係員がきました。プロ野球で「赤鬼」マニエルと言うのがいましたが、そんな呼び名がぴったりの人でした。
係員「あなた、どうしたんですか?」
私「ここで良いです、ヘルシンキ行きません」
係員「何故行かない、切符はあるし予約もある、何故行かない」
私「切符あっても、私行かない。ここで良い」
係員「ヘルシンキ行っても行かなくても料金一緒、お金別にいらない」
私「本当はここに来たかった、ヘルシンキには行きたくなかった」
係員「何故。何故、切符はヘルシンキになっている」
私も係員につられて、片言日本語です。
本当はヘルシンキ経由コペンハーゲンが旅行会社のミスでコペンハーゲン経由ヘルシンキになってしかも飛行機で飛べて、今到着したここでそういえば最終目的地は、コペンハーゲンだったと気がついた。なんて説明できません。日本語が流ちょうな人にも説明するのはかなり大変です。きちんと説明するにはその背景から始めねばなりません。ソビエトのビザは1ヶ月くらい取得にかかることから説明せねばならないかもしれません。
とにかく理由より、私たちは今このコペンハーゲンで降りたいと説明をしました。相手もよく訳の分からない日本人だが、コペンハーゲンで降りたがっていることはわかってくれました。
係員「切符お金払えない」
私「えっ」
係員「ここであなたの切符お金払えない」
どうも、コペンハーゲンからヘルシンキの間の航空券のお金を利用しなくとも返金できないと言ってくれてるようです。河本に代わります。
河本「コペンハーゲンで今日泊まります。コペンハーゲンのホテルOK?」
係員「予約消します、良いですか?」
河本「ヘルシンキ行きません。」
係員「この切符も使いませんか」
河本「OWU、使いません」
今から思えば、ノーマル運賃の航空券だったので、払い戻しはなくとも一年以内であればコペンハーゲン・ヘルシンキ間乗れたんですけど、そのときはそんなこと考えもしませんでした。
最終目的地のコペンハーゲンの空港に自分たちがいるのに気づいたのも、コペンハーゲンに到着してからで、日本出発前には、どこ経由であれヘルシンキにまず到着してからコペンハーゲンに行く頭しかありませんでした。よほど舞い上がっていたようです。
河本「安いホテル無いですか」ここで改めて係員私たちの格好をつま先から頭のてっぺんまで見てから
係員「ミドルクラスのホテルで良いですか」 私たち、アドレナリンの出過ぎでふわふわしてる頭で必死に考えました。ミドル、ミドル、真ん中、中間、ま、高い訳じゃなさそうだ。
河本「それで良いです」
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