VOL.33 インド(31) インドの物価について その3(葉月)
――私の経済感覚――
たとえ、ぼったくられていようと、すべてのものが安く感じられていた幸福な時はあっという間に過ぎ、現実が見えてくるようになる。
世の中に三ルピーのミールス(定食)が存在する事を知っていても、内容さえよければ、八ルピーでも安いと感激してしまう。ところが、一〇ルピーだと豪華であたりまえ、一〇ルピー以上でこちらの期待に答えてくれなければ、それはもう、ぼったくり、もしくは外国人プライス以外のなにものでもない。
ところが一五〇グラム二三ルピーのチーズなど、外国人しか買わないとわかっていても、手がでてしまう。一六ルピーが定価だと知っていても、エアコンレストランで、おつまみ付きビール三〇ルピーをみつければ、良心的だと思ってしまう。
こんなものがと思いつつ、有名ブランドのアイスクリームバーを八ルピーも出して買うくせに、一本一ルピーのアイスキャンデーを買うことはまずない。
大体、有名企業のつくっている物、外国人しか必要でないものは高く、零細企業がつくったもの、天然のものは安い。だから、一本五〇パイサ(二分の一ルピー)のバナナが高いと思えば、当然、値切ることになる。ある時、三〇ルピー位のルンギー(腰巻き)に一〇〇ルピーも払ってしまった。はっと気がついた時は、もうあとの祭である。時には、パイサ単位で値段交渉をし、日頃うまくやっているようでも、簡単にインド商人の手中にはまってしまうこともあるのだ。こんな時は実際の出費よりも、精神的に受けた痛手のほうが大きい。「二度と衣料品には手を出さないぞー」なんてむなしく誓ったりする。
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