「旅行記」
トラベルメイト
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リロとハツキの自転車旅行

 

VOL.32 インド(30)  インドの物価について その2(葉月)

日本からインドに行けば、すべての物が安く感じる。はじめのうちは、たったの三〇〇〇円で豪華なホテに泊まれる事が、申し訳なく感じる事さえある。ところが数週間この国に滞在し、経済活動を体験すれば、おおよその物の値段が見えるようになってくる。物の価値は必ずしもお金に換算できるものではない。  

例えば自転車。日本で、ツーリング車一台一〇万円というのは、手ごろな価格だ。人によっては、安くさえ感じるだろう。これをルピーに換算すると、二万八千ルピー以上になる。  
マドラスのサルベーション・アーミーに泊まろうとした時、自転車は部屋に入れてはいけない、と職員にいわれた。四人でドミトリールーム一室を借り切る話しがついた直後だった。パトリックとイヴォンヌは激怒した。二人のあまりの剣幕ぶりに、彼は会議でボスに相談しよう、と約束してくれた。だが、結果は同じ。その時、彼はイヴォンヌに向かって言った。

「君たちがこの自転車のことで、むきになるのはわかるよ。だってこれは、アメリカドルで二〇〇ドルはするものだろう?」
イヴォンヌはそれを聞いてさらに憤慨した。彼らの自転車は、トレックというアメリカ製のハンドビルドのツーリング車だった。アメリカで買ったって七〇〇ドルはする。中古のトレックが二〇〇ドルとすると、ある意味じゃあ職員氏の見識は正しい。この、かなり進歩的な青年にとっても、五六〇〇ルピーという金額の自転車は、非常識なものらしい。たしかに一万ルピーもだせば新品のスクーターが買える。  

旅行中、よく自転車の値段を尋ねられたが、円からルピーに換算して教えたところで、インド人は誰も理解できない。何しろインドの一流ブランド、ヒーローサイクルは、五〇〇ルピーくらいで買えるんだから。それではその質問にどう答えていたかって?理路はよく「オートバイ一台分くらいだよ」と答えていたっけ。

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