VOL.31 インド(29) インドの物価について その1(葉月)
私たちは余分なお金を使わない。貧乏旅行をしているつもりは毛頭ない。少ない予算で、より長く楽しみたいだけだ。そう、貧乏ではなくて節約旅行。
インドに限らず、旅行をしていると必ず、貧乏旅行者と称する人々に出会う。長期旅行者は、常に節約せざるを得ない宿命にある。当人は貧乏なつもりはなくても、物価、生活水準の高い国では、周囲の人の同情と反感を買うこともありえる。ところがインドでは、一泊五〇ルピーのホテルに泊まり、一日の食費に三〇ルピーの予算でも、貧乏している感じはしない。一万円札一枚あれば、一か月間楽しむ事だって可能だ。
九四年三月現在、一ルピーは約三.五七円。一万円なら約二八〇〇ルピーだ。インドルピーの凋落ぶりには、目をおおいたくなる。一九八四年、一ルピーは約二〇円だった。同じ一万円でも五〇〇ルピーにしかならない。この一〇年間のインフレ率を二〇〇%と仮定したところで、最近の円高ルピー安を考えれば、日本人の懐には全く影響はない。もちろんインドで暮らす人々にとっては大打撃だが、彼らの日常生活で重要なものの値動きは、もっとゆるやかだ。かつて一泊五〇ルピーだったカルカッタにある外国人御用達の安ホテルの一室が、現在では一五〇ルピーもする。しかしこれを日本円に換算すると、一〇年前一〇〇〇円だったものが現在は五〇〇円というわけだ。そんなところで目指すツーリストの貧乏って、いったい何?
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