車を買うか迷う
この時部屋を貸してくれたオランダ人以外に数人の生徒と仲良くなりました。その中に中古車販売のおっさんがいました。日本出る前からヨーロッパに着いたら金貯めて車買うのも夢の一つでしたから早速暇なときおっさんの店へ行ってみました。
置いてある車は中古車といえぜーんぶ「外車」です。当たり前のこととはいえ青山か麻布辺りの外車ディーラーを回っている気分です。
70年代前半の日本では大金持ちでなくても、ちょっと気の利いた自営業なら商用車を簡単に持てるようにはなっていました。でも若い連中は簡単に買えるのは軽自動車の中古くらいで、1000CCクラスの乗用車に乗れるのはちょっと小銭持ちの家の息子しか無理でした。
トヨタの「パブリカ」が大衆車としてかなり売れた時期です。この車は確か800CC空冷エンジンではなかったかと思います。
私らの友人で車に凝ってる連中の車種は、ホンダN3(ホンダN360)、スバル360しかも中古でした。綺麗好きな奴になると中にカーペットを敷き、土足厳禁、載るときにはスリッパに履き替えさせるとんでもないのもいました。
おっさんのお薦めは、ジャーマンフォード、タウナス。10万キロ越えた車でしたがエンジンの調子は良く、価格も安い。経費込み込みで10万円弱、せっかくためた滞在費が一気にゼロに近づく買い物ですが今の道場の仕事が数ヶ月続けば元は取れます。
車有れば、行動範囲が広がり時間の節約が出来ます。しかも日本なら絶対買えない外車...です。河本も車好きですし、二人でタウナスのボンネットに両手をついてしばし無言の時間を過ごしました。
私は意味もなく、ボンネットを拳で軽くノックし続けました。
「どうする?」
「うーん、どうしようか」
車が欲しい。金がなくなる。便利になる。金がかかる。今買えば生徒のお店だから信用できるし安い。今後こんなチャンスはない。
外車でドライブできる。貯めたお金が無くなる。交通費がガソリン代だけになる。多分節約できる。
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