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トラベルメイトトラベルメイト95

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「トラベルメイト95」
  1. 【もう一冊の本「ゴーゴーアジア、あるいはゴーゴーシリーズ」】

     この本は、「十二万円」の様に間違い探しは簡単ではありません。すごく口当たりがよく一通りこのシリーズを読むと「うん、こういう旅をしなくっちゃ」なんて思ってしまいます。この著者、蔵前氏も基本パターンは前書きにもあるとおり、「おきまりのパック旅行に身をまかせて、買い物、記念写真ツアーに出かけるのも一概に悪いとは思わないが、それが海外で奇妙な目で見られているという事も忘れたくない。」要するにソフトな言い方をしていますが「おきまりのパック旅行は決して誉められた物ではない(良い物ではない)、それでなくとも日本人の団体旅行は奇妙な目で見られているから。」もっと単純に一口で言い切ってしまいますと「パック旅行はよくない」。

     「(それに引き替え私が薦める旅は)できるだけお金をかけず無理もしないで、時間をかけると言う物です。」

     「誰にでもできそうな旅の話がこの本にはいっぱい詰まっている。....ぼくはとりわけ強健なからだと強い意志を持ってるわけではなく、語学に堪能というのでもない。(こんな私でもできるのだからあなたにだって簡単にできます)」

     下川氏のように直接的な断定は蔵前氏はしません。常に何パーセントかは反対の意見も許容するような書き方ではあります。ですからちょっとよく解らない部分も出ては来るのですが、一概に悪いとは言えないが、とか少しは役に立つだろうとかの部分を、よくはない、かなり役に立つとシンプルに言い換えますと理解し易くなります。例えはちょっとよくないかも知れませんが政治家の出馬の弁と言う奴に似通っています「私のような若輩者が、他の人を押しのけて立候補するのもおこがましいとは思うのですが、回りの方々から是非というご推薦を受け一度はご辞退申し上げたのですが、諸先輩方の更なるお薦めを断りきれず云々・・・・・。」本当は私は立候補したいから万難を排して出た。そういえば良いじゃん、ぐたぐた言わずにね!

     「やることやって、色々頑張ったからこんな旅の本できました読んでよ。」
     彼がどんな旅がお薦めかと言っているかと言いますと「おきまりのパック旅行で買い物、記念写真ツアーに出るのは海外で奇妙な目で見られているから薦めたくはない」
     「強い体と意志を持っているわけでもなく、語学に堪能でもなく、細身な体のぼくの旅のやり方は、できるだけ金をかけず無理もしないで、時間をかける旅行である」

    さすがに貧乏旅行とはっきり言わないところが、少しテレテルかなと言う感じもしますが、ちょっと見にはなんの反論も出そうもない納得できそうな旅です。少し引っかかることと言えば、「海外で奇妙な目で見られてる事も忘れたくない」この部分です。

     誰がと言う主語がありません。はたして奇妙な目で見てる人は誰なんでしょう。蔵前氏のような金をかけない旅行をしている日本人でしょうか、でも彼らの生息地は観光地ではないはずですから、観光地とお土産やさんブランド品のお店しかまわらないおきまりのパック旅行の人達とは出会うはずがありません、たまたまであったとしても一瞬でしょうから意見を言えるほどの交流はありませんでしょう。では現地の人でしょうか?

     これも彼ら安宿派の回りにいる現地の人達は、おきまりのパック旅行者との接点はあまりありません。では現地のマスメディアがそう言ってるのでしょうか。前書きで彼は語学には堪能ではないと言っています。そうすると現地で英字新聞を読んで日本人観光客の横暴についてとタイトルを打った記事を読んだ訳でもありませんでしょう。むろん現地の国語、インドならヒンズー語、スペインならスペイン語、ブラジルならポルトガル語の新聞を読める語学力もないはずですからこれも違います。大体が例外はどこにもいますが一般的に言って長期貧乏旅行をやっている人は新聞など読まないし、読めないし、世俗の動きはあまり興味を持たない人が多いのです。
    ならばこれも違いますね。

     帰ってきた日本で読んだ新聞とか雑誌にそう出ている。これはあり得そうです。ほとんどの個人旅行者向けのガイドブックの基本の姿勢がそうですし、新聞雑誌のコラムも、読者の投書欄は特にそうです。一口で言えば「世間が」そう言ってると言うことなんでしょうか。一般的な「常識」がそうなんでしょうか?そうだとしたらこんなもん私たちは認めません。

     私たちのメンバーの中でも買い物に興味がない人もいますし買い物に旅行の目的の大部分が行ってしまってる人もいます。それには良い悪いの意見を言うべき事ではないと私たちは思います。単純にあいつとは性格が合わないからあいつの買う物も、その趣味も、買い方さえ嫌だと言うこともありますでしょうし、性格は好きだけどもどうも買い物の趣味がと言うこともありますでしょう。

     お互い様という言葉があるようにあなたが相手の趣味をけなすとしたら、相手だって嫌っているかも知れませんそれは相対的な物ではっきり言ってどっちだって良いのです。まして「おきまりのパック旅行」の人達は自分のお金で旅行してるわけでみんなの税金で旅行してるわけではないのです。

     確かに私たちの中で、旅行業に関わっている人達の経験談を聞きますとすごい人達はいます。それはパリのブランド品店でも、香港の免税売店でも、アメリカのアウトレットショップにたまに見かけることはあります。百の団体がいたとしたら二、三は典型的な一番高くて有名なブランドをこれで見繕ってくれパターンの団体がいるかも知れません。百人のグループがいたとしたらそのうちの何人かは腹巻きからお金の人がいるのかも知れません。

     でもそれは、最初から結論を決めていて証拠を鵜の目鷹の目で探している意地悪な考え方でしょう。パック旅行で百人メンバーがいればほぼ百%いわゆる典型的日本人パターンの人は何人かは探すことができます。だからといって百人の大部分が典型的日本人パターンの人達なのでしょうか?

     ほとんどのパック旅行に参加した人は奇妙な目で見られる行動はとっていないはずです。いわゆる日本では普通と思える格好をして、現地の人でも観光地と認める場所に行き、日本人ではない他の外国人も当然よく行く場所ですし、全員が侍姿かちょんまげか芸者姿で旅行しているわけではないのです。

     もう一度考えてみます「誰が日本人のおきまりのパック旅行に、どんな面を奇妙な目で見ているのでしょうか」

    世間一般がと言うのであればそんなもんどこにあります。海外にも、アメリカの世間はこう言ってるとか、フランスの世間はこう言ってる、いやインドの世間はそうは思わないなんて事があるのでしょうか。

     どんな面を奇妙な目で見るのでしょうか?多分蔵前氏は(私が推測して良い物かは解りませんが)団体でぞろぞろカメラを持って歩き回って、観光地と買い物しかしないから奇妙な目で見られる、せっかく海外に来たのだから現地の文化を知り現地の人と交流しなければ、良いチャンスなんだからと言いたがってるのでしょうか。

     日本人だけでなく、中国とかタイ韓国香港の人なんかも団体で旅行してますけどね(新宿のストリップ劇場は東南アジアのおっさんも団体できてますよ)。日本でも新宿とか東京ディズニーランドにも沢山の団体客がいますし、秋葉原にもたくさんいますよ、写真もバチバチとってますし。でも私ら別に奇妙な目では見てませんが。

     一九六〇年代のアメリカ人も、団体でヨーロッパ旅行をした口です。確か「パリのアメリカ人」という映画はその当時のエピソードを題材にした物ですが、アメリカ人は今でもパリに行くとタイとか日本での陽気さは影を潜め、声の大きさも半分になります。大きな体が半分になりながら、団体で観光旅行してますよ。(昔よりずいぶん人数は減りましたが)

     最近流行っているのがインドでのロシアの人達の団体旅行。彼らだって観光して買い物して、レストランで大騒ぎして。

     どの国でも一度は通る道です、日本だけが日本人だけが団体観光旅行をしているわけではありません。過渡期ですよ過渡期!経済状態がどんどん良くなってきて、最初は団体旅行が流行り、それが量的に増えてくると次に個人旅行も増え始める。逆は絶対にあり得ませんどの国でも団体旅行が先で個人旅行はその後です。

     団体も個人も回数と人数が増えると段々サマになっていくのです。まだサマになってない人が団体の中に若干いたとしても、誰も現地の人は奇妙な目では見ません。むしろ、たまの一瞬に海外ですれ違ういわゆる「個人自由旅行」をしている人達がせっかく個性的な旅行をしているにも関わらず、パック旅行の日本人と一緒だと現地の人に思われるのが嫌で自分たちが奇妙な目でパック旅行を見ているのではないでしょうか。それをあたかも、外国の世間様がそう見ているなどと言うのはルール違反です。

     現地の人から見たら貧乏旅行者も、個人自由旅行者もパック旅行者もあまり変わりはありません。お金持ちの姉弟で、いつもハイファッションの服を着ている姉と、Gパンのよれよれの物にいつも変わらないトレーナーの弟くらいの違いはあるでしょうが。観光産業で食ってる人以外は遊びに来ている人達がどう思おうが日常の生活の中でそう大きな割合を占めてはいません。要するに関係ない事なのです。(ネパールとかバリ島のように観光産業の割合が全体から比べ多い所はちょっとは違うでしょうが)

     そう言うところから見ると、どんな貧乏旅行だろうが、パック旅行だろうが相手から見たら目くそに鼻くそです。単に通りすがりの人達です、本当の所は数奇な目でさえ見られてないでしょう。日本で海外旅行大好きな人達がいたとしても、外国人貧乏長期旅行者の生態に興味を持っていますか?接点が日常にありますか?都会でも毎日みかける訳ではありませんでしょう。

     海外からの団体パック旅行の人達はどうでしょう。新宿とか秋葉原、日本橋、京都でよく見かけたとしてもそれだけですよね、普通。今日かたずけなければならない仕事とか、夜のデートの方が気になります。ボランティアで通訳の仕事をしている人とか、外国人がよく行く観光スポットの回りに生活の場所がある人以外あまり日常的な物ではありません。

     でももしメディアの人に「最近日本でも増えてきた外国人旅行者についてどう思う」などと聞かれたら、そういえば二カ月前に新宿西口で会った東南アジアからの団体客はと思い出しながら答えるでしょう。

    常に「うん、そういえば」なのです。外国だって一緒です、「うん、そういえばそんなこともあったかな」と言う程度のことで、しかも主語の解らない奇妙な目を基準にしてパック旅行云々は決して言えないことです。

    私どものメンバーの七〇%は保証します。「誰も普通のパック旅行者であるあなた方を、旅行先の人は奇妙な目でなんか見てません。」

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