トラベルメイト > トラベルメイト95
<<前のページ 次のページ>>
「トラベルメイト95」
- 【 レイノルズ数で考えてみると… 】
レイノルズ数というのはこう使います。
イカや鰹のレイノルズ数は約10万、水は彼らに対してさらさらの粘度のない液体ですが、0.1ミクロンの精子はレイノルズ数が0.1、水は彼らに対してねばねばの飴みたいなものです。
私たちが社会生活をする上で、社会に対するレイノルズ数というのは確実にあります。その人個人の素質・環境・体調などで、レイノルズ定数0.1の人から、10万の人までいるわけです。確かに水それ自身はどこにいっても水ではありますが、その中で生きているものにとっては状況によっては決して同じものではありません。それを水は万人に対して同じ水であると言い切ってしまったところから、今までほとんどの話は始まっています。
「世の中には色々な人がいて、色々な考え方や文化があり、沢山の違った環境があるけれども、それらは沢山の個性と理解すべきで、相手の個性を認めれば自分の個性も認めてもらえる、同じ地球上にいる人間同士なんだからそれなりの努力をすればお互い絶対理解し合える。」
大変ご立派な意見ではありますが、本当にそうなんでしょうか。レイノルズ数0.1の人に、レイノルズ数10万の人があなたも努力すれば私と同じように泳げるようになります、何せ同じ人間だから、と言ったとしたらどう努力すればよいのでしょうか。
旅行のガイドブックが非常に分かりにくく、一見良さそうなことが書いてあるにも関わらず実際に実用になるかということではいまいちであるというのは、この辺に原因があります。ガイドブックを書くライターあるいは作家等はレイノルズ数がかなり大きくないと書けないし体験できないし、第一書いた原稿を採用さえしてもらえないはずです。それに対しほとんどの旅行者はレイノルズ数がそんなに大きくない人たちです。
鰹が水中で宙返りをしたり長距離一気に泳ぐ楽しさを0.1ミクロンの精子に伝えようとしたところでねばねばの水しか知らない者に伝わるはずがありません。初心者はまさしくこのねばねばのレイノルズ数0.1から始めなければならないのです。鰹が体験した話をそのまま説明しても自慢話にはなったとしても、初心者にとっては実現不可能な理解不能な話です。
この意味で今までのガイドブックはほとんど勘違いをしています。「すべての読者がほとんど同じ理解能力と体験を持っており、初心者も中級者も上級者も同じ人間だからそんなに差はない、せいぜいこの本を読み終わるころになれば皆同じレベルで理解し合える。」そんなことはあり得ません。
初心者には初心者なりの、中級者には中級者なりの説明が必要です。上級者には技術的な説明は必要ないのでしょうが、今自分がしてきた旅の経験をどう考えるかについてのヒントは必要でしょう。この本では読者を全員が同じレベルであるとは考えないで作ってあります。自分がどのレベルであるかは読んでみて一番共感できた部分か、あるいは一番反感を持った部分のあるところがあなたのレベルです。もし共感も反感ももてないとしたらこれは困りました。あなたのレベルがこの本を理解できるまでになってないか、この本が一般の水準に達していないかどちらかですので、こればかりはあなたの判断に任せます。
<<前のページ 次のページ>>
↑ページ最上部