[vol.18]
8月13日(金)網走〜美幌〜阿寒湖〜釧路〜帯広

雨は降っていないが低い雲がたれこめる。涼しい。北海道に来てから始めて上着をきた。網走にきたからやはり刑務所だ。こちらに着いて知ったのだが、本当の刑務所のほかに監獄博物館があり観光名所になっている。

本物の刑務所は駅から2Kほどの国道に面したところにあり全然番外地という感じはしない。むしろ学校みたいだ。時代が違いすぎるのかそれとも造られたイメージに惑わされているせいなのか。その両方かもしれない。

監獄博物館はバスで10分ほどの天都山という丘の中腹にある。丘全体がレジャー施設になっていて流氷博物館やスキー場、オートキャンプ場などが点在している。そのなかで監獄は目玉だ。やれやれ。

もちろん、ここは古い建物を復元して移転したものでもともとの場所ではない。入り口を入ると写真を撮られる。出口で出獄証明書にして売るらしい。なんとも商魂たくましい刑務所だ。施設はこんなもんかという程度だったが、やはり厳しい寒さという檻が最大の罰だったかもしれない。解説にはきれいごとばかり書いてある。

ゾルゲのことを思う。スパイとして投獄されたゾルゲは獄死してなお横になることを許されず座棺に入れられた。厳冬で木が十分用意できなかったとされているが本当はどうだったのだろうか。いつか読んだ本のなかで、吹雪のなか駅から刑務所に歩いて出むく妻の悲しみの描写は印象的だった。極悪人といってもゾルゲのようにその時代の都合でそうレッテルを貼られた人も多いのではないか。悲しい時代もあったのだ。

あまり気持ちのいい観光ではない。しかし盆休みだからか帰るころには駐車場は満杯になっていた。網走にとっては刑務所さまさまのようだが何度も来てみたいところではない。

国道39号線で美幌に向かう。結局、博物館の下を通る道をそのままいき美幌から240号線で釧路をめざすことにした。天気がよければ別のルートをとり摩周湖によってみたかったが何にもみえそうもないのでやめた。

美幌には35年前高校生のときに来たことがある。日本では今世紀最後の皆既日食があり親戚を頼って一人で来た。長い一人旅はそれがはじめての経験だった。5年程前やはり皆既日食を見に地球の裏側ブラジルにまで行ったが、それよりも東京から美幌まで30時間のあの汽車の旅のほうがずっと長い旅として記憶に残っている。風太はいつから一人旅をはじめるようになるのだろうか。

美幌でメロンを食べた。スーパーで600円もしない安物だったがやたらうまい。新鮮で本場ものは違う。

途中、阿寒湖に寄った。天気がいまいちでどうということもなかったがマリモを養殖して土産物にしているのに驚いた。なんかマリモの神秘さもめずらしさもなくなってしまった。早々に出発しようと国道に戻りかけると意外なものが目にはいった。

駐車場の入り口に60センチくらいの大麻草が生えているではないか。人の多く出入りする正面でよくもまあ誰も気ずかなかったものだ。辺りを捜したがその一本だけだった。まだ雌雄も区別もつかず、たいした大きさでもないのでマリファナにしてもそれほど効力は期待できそうにないが折角なので抜いて持ってきた。

阿寒湖から釧路まで110K。トラックで移動。マリモロードと名付けられた道は人家もまばらで鹿注意の標識があちこちにある。毎年数百頭が車にはねられて犠牲になるらしい。あまりおいしくないそうだがその肉を食べさせる食堂もある。名前ほどメルヘンな道路ではない。釧路市街の10kくらい手前で帯広方面へ向かう39号線にでた。

威勢のいい運送屋の奥さんに乗せてもらった。盆休みのパーティで子供たちのためにゲーム機をつんでいた。風太はめざとくやりたいというと、旅をしているときはゲームのことなんか忘れなさいと強い調子でたしなめられた。しっかりしたお母さんだ。

15kほど行き、こんどは大学生の乗用車にのせてもらった。帯広の花火をみに行くという。今日はマリファナをすいながら花火大会。贅沢なものだ。片側1車線の一級国道は北海道ではめずらしい。しかし直線が伸び、信号がないのでみんな平気で100k以上で走っている。やはり北海道だ。

帯広は大きくて新しいビルが立ち並んでいる。なかなかいい街だ。駅へいきホテルをさがす。どこに電話しても盆でいっぱいだ。やっとビジネスホテルのシングルがあった。途中、ろうそくとアルミフォイルとライターを買った。部屋に入りさそっくバスルームで大麻を乾燥させ吸った。あまり上質ではないがそれなりに効く。

残念ながら天気が悪く花火大会は明日に延期。夕飯に十勝名物の豚丼を食べた。こちらの人は牛丼よりも豚丼が主流らしくあちこちに店がある。外に行列のできている専門店もある。それなりにおいしいのだが全国区は無理のように思う。その点、沖縄のソーキそばと似ている。

Copyright(C)1999 小島春彦