第36回 血液 (2002/01/29)
ヨーロッパでは今年から新しい通貨ユーロが流通しはじめた。お金は経済の血液といわれる。新しい通貨に切り替わるということは、血液が新しくなるということでもある。
5年ほど前、息子とヨーロッパを旅した。ユーレールパスという鉄道乗り放題という切符をつかって、オランダ、ドイツ、オーストリア、スイス、イタリア、フランス、イギリス、ベルギーなどをまわった。
それぞれの国はみな自国通貨を持ち、入国するたびに両替をする必要があった。それはそれで楽しいのだが、すぐに両替してくれるところがないと食事もままならず苦労もした。しかし最も驚いたのは、そのつど結構な両替手数料をとられたことだった。
いつか読んだ記事によると、最初に1000ギルダーでオランダを出発し、ヨーロッパを1周しながら両替を繰り返し、ふたたびオランダにもどってくると800ギルダーしか残っていなかった、と書かれていた。両替業にとっては天国のようなところだったが、産業にとっては余計な負担になっていた。それがユーロの導入で一挙に解消されたわけだ。
人間の血液はそうそう入れ替えるわけにはいかないが、質を変えることはできるのかもしれない。自分の血液においては、血糖値をコントロールして下げ、酸素の濃度を高くし、好ましくないコレステロールを少なくすることで質を改善することが必要だ。
おとといのAsahi.comによると、オランダでは早くもユーロへの切り替えが完了したそうだ。長い準備期間があったのかもしれないが、数百年の歴史をもつギルダーをたった1ヶ月足らずで入れ替えてしまったのには少々驚いた。
人間の血液の質の改善も、うまくやれば案外時間はかからないのかもしれない。入院してインシュリン注射をするようになってからすぐに体調が変わりカッタルさがなくなった。深呼吸をすると楽になる。顔色もよくなる。
今日から再びインシュリン注射を中断して飲み薬にかえる。2週間前に試したときには薬でも十分に効果がありそうだったが、一時的に血糖値が予想よりも高かったこともあり、やけどの傷口の具合を考えて注射に戻した。今回、傷口がかなり改善したので再挑戦だ。
薬は食事直前に飲む。うまくいけば、すい臓のランゲルハルス島のB細胞を刺激してインシュリンの生成を助け、消化時に血糖値が上がるのを抑えてくれるはずだ。
今、自分の臓器で必要量のインシュリンがつくれることを願いながら朝の食事を待つ。
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