第3回 電波人間 (2001/12/26)
現在の私には点滴チューブ1本、酸素吸入用チューブ1本、両肩と左わき腹の3個所に電極用吸盤が、左手の人差し指にはキャップ状の電極が付けられている。4つの電極からはカラーコードが出ていて、小型ラジオくらいの大きさの発信機にとりつけられている。
発信機からは隣のナースステーションのモニタに情報が送られ監視されている。コードやチューブがとくに重かったりすることはないのだが体を動かす度に絡まったり抜けたりして往生する。寝返りをうつのも乱暴にはできない。足の裏にはやけどの損傷があるので、歩行は禁止されている。移動は車椅子だ。
部屋はナースステーションの隣にあり、ドアで直接出入りできるようになっている。さらに壁には大きな窓が設けられていて、こちらからもナースステーションの様子がよくみえる。
自分のベッドはもっともステーションに近い位置にあり、頭左にあるドアからは始終看護婦さんが出入りしている。
客観的にみれば、自分の位置はもっとも監視しやす場所にあり、しかも電波が確実に届きやすい。こうしてみると、医師たちが最も恐れているのは、やけどの状態や敗血症の進行ではなく、心筋梗塞なのではないかと思う。いままで心臓に関してはとくにトラブルはなかったから意外な感じもしたけれども、ずいぶん無理もしてきたから、しかたない気もする。
糖尿病の場合、全身の痛みの感覚が低下しているので、軽い心臓発作では気が付かず大事にいたることもあるらしい。
それにしてもこの送信機はおそまつだ。人の命がかかっているというのに簡単にコネクタが抜けてしまう。着脱が容易で、しかも抜けないコネクタなど今では当たり前なのに、どうしてこんな前時代的ものを使うのか。また電池駆動の発信機なのに、バッテリのインジケータもない。
きのうモニターの波形がおかしいといって、体の電極盤を変えてみたり散々いろいろなことをやってみて、結局バッテリが低下していたせいだと判明した。バッテリがなくなってもとりあえず発信をつづけるのはりっぱだが、かといって肝心の波形が変形されてしまったら意味はない。これを設計した奴はとてもプロとはいえない。
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