vol.030 香港 (3)
次の日からは、私たちバラバラに行動しました。向こうにしてみても一人だけ知 らない人間が一緒にいるのは気詰まりですし、私にとっても気ままに行動できないからです。
香港二日目は、午前中は朝寝坊して午後から行動しました。中村たちはもう観光に出かけたみたいで姿が見えません。エレベーター前のソフアーに座って今日の予定を確認してると、日本人らしい髭面の旅行者がエレベーターから降りてきました。普通は面倒なのでお互い黙ってやり過ごすところですが、ちょうど目があってし
まいました。ここでわざわざ目をそらすのもきまり悪いのです。
「今香港に着いたのですか。」
彼は、下顎の髭をなでながら答えました。
「いや昨日の夜遅く到着して、別の所にいたんですがここ安いと聞いてかわってきたんです。」
風体を見ると、かなり旅慣れているようで、小さな肩掛けバッグ一つに首から 下げた貴重品袋、サンダル履きにぶかぶかの綿のパンタロン、顔は良く日焼けして目はちょっと落ちくぼんでいましたが、かなりきつい目でした。どうもここ2.
3週間の旅行初心者ではなさそうです。
「そこの旅行会社のカウンターが宿泊の受付もやってます。」
「そうですか、どうも。今からどっかへ出かけるんですか」
私「ええ、今から中国国境への展望台へ行こうと思ってます」
「そうですか、じゃあまた」
私「じゃあ、どうも」
思わず私、標準語を使っていました。それから10分ぐらいして、出かけました。 まず日本航空でバンコック行きの飛行機のリコンファームです。これは簡単に終わりました。日本人のスタッフがいたのですべてが日本語でできたからです。
時間はもう午後になっていました。今日は起きたのが12時前だったのでまだ 何も食べていません。近所のレストランで昼飯を食べることにしました。昨日の屋台は、四人で食べたこともあって一人1.5HKDで何とかいけました。今回
は一人ですから2HKDくらいは覚悟したのですが、ランチタイムの定食がスー プ付きで1.3HKDから、結局今日のお昼はちょっと豪華に1.8HKDの定食にしました。焼きめし、豚肉と野菜の炒め物、スープしかもうまい。香港はいい所です。
国境の展望台がある、ローマチャオへ着いたのは四時を過ぎていたように思います。展望台がある丘の向こう側には、河を挟んで中国側の田園風景が広がっています。
川の向こうもほとんどこちら側とかわらないのどかな田園風景です。始めて生で見る共産圏の田舎です。展望台に備え付けの双眼鏡で見てみました。兵舎らしい建物が2kmくらい先にあり、人が動いているのが見えます。
ここ以外には川沿いには人影が見えません。国境なので当たり前と言えば当たり前なのですが、この河を泳いでわたろうとしたほとんどの人は失敗したなんて話聞いてましたので、川沿いに双眼鏡を動かしましたが、やはり誰もいません。双眼鏡には数回コインを入れましたでしょうか、竹のカーテンの向こう側もこちらと同じ夕方の風景でした。
ここで撮った写真がありますが、靴は黒のバックスキン、ズボンは淡路(阪急線だよ)のスーパーで買った青の綿パン、上は茶色の徳利のセーターに青のウインドヤッケ、安物のサングラス、髪はそう長からず短からず、いわゆる学生風、
まだ頬はこけてない元気な私が写っています。
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