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【 片山くんが行く(16) 】
久々の心地よい目覚めでした。公園で野宿してるときはそれなりにちゃんと熟睡できるようになったと思っていたのですが、やはり屋根の下でベッドの上で寝る場合とは雲泥の差がありました。
お金はだんだん最悪の事態に近づいています。50$以上はあるのは確実ですがもう100$を切ってから数日経ちます。計算する気力も起きません。今日の朝は宿泊費として5$分払わねばなりません。仕事探しは進展を見せていません。
最近は、中華料理店中心に裏口を渡り歩いていました。それも少し種切れだったので普通のレストランも回り始めたところでした。通常は皿洗い、それもなければ掃除に残飯捨て何でもよかったのですが職は簡単には見つかりません。このまま行けば結果は目に見えて分かっています。今は5$以上持ってますからYHにも泊まれるし、食パンも買えます。たぶん所持金30$を割ったら、二人ともあわてるでしょう。こうなったらYHにたまには泊まる余裕が精神的になくなってしまいます。
食パンに牛乳はまだ買えるかもしれません。量が半分になるかもしれません。もっとお金が減ってくれば、.....考えたくありません。ただ単純にいえることは、最低限の一日必要な経費を所持金が下回ったらその次の日からは牛乳を買うお金さえなくなると言うことです。これは困ります。困りますが、困ったらお金がわき出てくるわけではありませんから、やっぱり困ったままです。どうなっちゃうんでしょう!!!!!
本当はそう言う追いつめられた状況に私たちはあった訳なんですが、今思い出してもその日の夜は深刻にはなっていませんでした。だってね、今いるとこはコペンハーゲンです。70年初頭の日本から、一足飛びにワープしてきた小田急沿線に住む庶民の息子達にとってここはおとぎの国です。クルミ割り人形にでてくるお菓子の国でした。道を歩いているのは金髪ですし、体はでかい見栄えの良いのが多いし、町はこじんまりとしてきれいだし、金平糖の精が今にも公園で踊りだしそうな町でした、特に夜は。
そういうところで、所持金が減っがても現実感があまりありません、たぶんロスとかカルカッタならずっしりと胃の方には応えてきたと思います。
次の日も朝から仕事探しです。昨日は荷物を持たずにレストランを回れたので気分的にも肉体的にも非常に楽でした。今日の朝は、仕事探しに行く前にしなければいけない決断があります。それは今日もう一泊屋根付きのベッドに泊まるか、それともチェックアウトして荷物かついで、またレストランの裏口のドアをたたくか。
私「きついな、また荷物かついで回るの。」
河本「うーん、金ないしな、疲れたな、午前中はお休みにして休息とるか」
私「そうだな、金がな」
昨日は夜寝る前、おとぎの国のYHで、明日になれば何とかなりそうな予感がしました。そして何とかなりそうな朝が来ました。確実なのは昨日の宿泊費分、持ち合わせが減っていくことです。朝飯分は、まだ食べてませんから、食べなければお金は減りません。コペンハーゲンに到着してからまだ朝飯は抜いたことがありません。食欲がなくて食事をとらないのは何ら惨めではありません。忙しくて朝と昼が一緒になるブランチも気分が沈んだりはしません。お金が少なくなって、一週間後のために朝飯を抜いたほうが良いとなったときは胃が重くなります。却って払うお金がなくて朝飯が食えない方が選択の余地がなくてシンプルです。
河本「朝飯どうする?」
私「まだ朝飯くらいは、朝飯前だけどな、今日泊まるかどうかがな」
笑えない冗談です。河本、やはり笑いませんでした。
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