「旅行記」
トラベルメイト
監修・編集

リロとハツキの自転車旅行

 

VOL.15 インド・ホテルマンと押し問答

 

マルガオからナショナルハイウェイをさらに南下する。今日めざす町は、七〇キロ先の海沿いの町カルワールだ。  

地図を広げると、私達の行く手を妨げる形で、西ガート山脈の山並が海岸まで迫っているのがわかる。カルワールにいくには、山の中をまっすぐつっきるハイウェイを通るルートと、山を迂回して、ラマ岬のそばを通る海寄りの旧道がある。どちらのコースも多少の峠越えがありそうだが、私たちは遠回りを覚悟で、ラマ岬経由を選んだ。ハイウェイの登り坂を、トラックのばい煙を吸いながら上るのは、想像しただけでもうんざりだし、この先、ハイウェイを迂回するコースなどほとんどないことは、地図をみて明らかだったからだ。  

今回用意した地図は、ドイツのNelles「南インド」、それにアメリカの航空地図「ONC」を日本で買った。一五〇万分の一のNellesは、主要な都市間の距離と地形がでているので、計画をたてるのに便利だ。航空地図の方は一〇〇 万分の一で、標高など詳しく地形を知る事ができる。特に山岳地帯を走る時は必需品だが、今回のような海岸伝いの旅には、なくてもかまわない。  

けれども、前もって地形を把握することができると、気分的に楽ではある。このほかに、私たちはインド製の地図も入手した。TT.MAPSからでている赤い表紙の州別ガイドには、二〇万分の一のロードマップが付いている。それには、ローカルな道路と小さな町の名前が、距離表示付きで出ていて、これがとても重宝する。 結果として私たちは、この地図とガイドブックだけでインドを旅行した。  

ハイウェイをそれて岬に向かうと、道はやがて上り坂にさしかかった。予想通り、通りかかる車はほとんどない。なにもないひなびた丘の向こうには、風力発電のプロペラがインド洋からの風を受けてまわっているのが見える。インドの景色の中で はめったに見る事のないそのシンプルで近代的なデザインが、紺色の海原に白く眩しく映えていた。

細かくアップダウンを繰り返す道は、移動二日目の私達のスタミナを確実に消耗 していった。ようやく小高い岬を迂回し、向こう側のコーラという村に降りた頃には、すっかりエネルギーがきれてしてしまい、力が抜けた感じに陥ってしまった。 長い間運動から遠ざかっていたことも、疲れの原因だ。手持ちのバナナを食べ尽くし、最後に残ったみかんを葉月と二人で分けた。  

サイクリングを始めたばかりのこの頃は、果物以外にエネルギーとなる食料をもって走らなかった。朝早めに出発して昼食までには到着するつもりだったので、途中で止まって食べるのがめんどうだったのだ。立ち止まると、きまって好奇心をおさえられないインド人がやってきて私達に質問を浴びせる。それを見物する人垣ができはじめると、周囲はなんだなんだと騒然とした雰囲気に包まれ、休憩どころではなくなってしまうのだ。  

もうひとつ、荷物が増えるのが嫌だったというのもある。食べ物は、必要な時に店で買えば良いと考えていたからだ。けれども、エネルギーの補給は疲れる前に細かくとることが大事だ。昼食でとれる栄養とエネルギーの補給は別枠で考えたほうが良い。私達はその後、休憩で食べる食料を持ち運ぶようになり、その量は次第に増えていった。一年後、オーストラリアを走っていた頃は、キャンプ道具と一週間分の食料、水二〇リットルのほかに、補給食として、パンとバター、ピーナツクリーム、ジャム、ミューズリーバー、ゆでたまご、とまるで別人の装備になっていた。

 

つぎへ→

 


E-mail: mail@travelmate.org
これは Travel mate のミラーサイトです。
ページ編集・作成:@nifty ワールドフォーラム