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トラベルメイトトラベルメイト95

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「トラベルメイト95」
  1. 【旅行第一日目より最終日まで】

     旅行第一日目は何回目の旅行であっても、妙に緊張して気分が少しハイになっています。あなたの回りが毎日ほとんど変わらない日常生活から、回りには知っている人も少なく、昔からの知り合いであっても久しぶりであったりする非日常の世界にはいり込んでいるから仕方がありませんが、通常より多大なアドレナリンが全身に回っています。矢でも鉄砲でも持ってこいの状態です。

     こうなりますと一種の薬物中毒と一緒で短い期間は今まで不安だったこととか出来そうもないと思ったこととかが、なんでも無くなり今までのあの不安は何だったんだろう私は旅にでて確かに変わった強くなったんだ等と思いがちです。

     あなた自身がそう思っているわけですからまんざら嘘ではないし、頑張っているのでしょう。ところがこのハイな気分がくせ者です。ずーとハイな部分が続くので有れば確かに変わって強くなったと言えるのでしょうが、残念なことに非日常生活用アドレナリン中毒は長くは続きません。

     人によっては二日しか持たないかもしれません、あるいは三カ月持つかもしれません。いずれにせよ短期間です。このハイな気分は途切れるときが必ず来ます。そうなったときの落ち込みは、気分の高揚が高かったら高かった分だけ激しいものになります。どんな種類の旅行に出かけた人も、どんな性格の人もこればかりは一緒の体験をします。

     旅にでる前の日常生活の中でもハイな部分とロウな部分のくり返しはありますが、旅行中はベースとなる部分がとんでもなくハイになっていますので場合によっては旅行中の気分が一番沈んでると思える部分でも、旅行前の気分が一番飛んでいるレベルより高かったりします。自動的に身体の方で日頃生活とは違うレベルになるように調整してきているわけです。

     このレベルの調整によって、不安感とか、恥ずかしさとかが減り、大丈夫何とかなると楽観的な気分ができあがります。最初の出だしの所では気分が調子良いだけでも通用しますが、所詮気分がいいだけの空元気というやつで、長続きはしません。色々体験して出来た慣れによる行動ではないからです。一口で言えば体内で覚醒剤を増産しながら突っ走ってる状態です。

     旅慣れはこの状態を何回も繰り返しながら途中休んで体調を整え、時間を掛け、費用を掛け気分と身体を旅行しやすいように持っていくことなのです。旅行の最初のころは旅慣れはありませんから、緊張感から来る疲れをアドレナリンで高揚した気分で押さえ続けることとなります。

     何回か旅行したことがある人でしたら、日常生活の守られた区間から、非日常生活モードに切り替えがスムーズに行きます。こうなればかって体験したことを思い出しながら旅行を続ければそう疲れがたまることもありません。

     初心者の旅行者は困ります。日常生活モードしかないわけですから、切り替えるべき旅慣れモードはまだ使いようがありません。緊張感でこちこちになりながらも、気分を奮い立たせながら旅行を続けるしか有りません。

     これじゃー旅行続けても楽しくないじゃん。そうです楽しくありませんはっきり言って。頭の中で考えていた楽しい旅行ではありません。くたくたに疲れて緊張の糸が切れそうなぎりぎりの所で感じる奇妙な安心感と楽天的な高揚感、これらははっきり言って「もらい」の感覚です。最初に考えていたのと別の所から全然違うものがでてきた感じです。これも悪くはありません。

     悪くはないのですが疲れます。それも尋常なものではありません。もしあなたが初心者かあるいは旅行のハジッコをかじり始めた旅慣れすいすいとほど遠い状態の時なら決して無理はしてはいけません。すべてに兎以上の臆病さで行動してください。熱っぽくて体がだるいのなら直ぐ観光予定を切り上げてホテルで休んでください、食事が現地のものが食べれなくて食欲がわかなかったら、日本から持参したインスタントラーメンを食べましょう。(最近は世界中だいたいどこに行っても、それなりのインスタントラーメンは売ってますからわざわざ持っていくこともないかもしれませんが。)

     観光地ばかり回って庶民の生活が体験できないもっと現地の人とふれあいがもてるはずなのに明日からは引っ込み思案の性格を少しでも奮い立たせて町に出ようなんて事は考えないでください。

     無理は禁物、引っ込み思案の人が全身こちこちにして顔をひきつらせて「ハロー」なんて話しかけても相手はちっとも嬉しくありません。人と話するのが嫌なら無理することはありません、泊まっているホテルの部屋でもコーヒーショップでも気に入ったところで本でも読んでたら良いじゃないですか。少し気分が良さそうだと思ったらホテルが歩きながら見える範囲の所をぶらぶらしてもおもしろいです。

     だいたいが今までのガイドブックは旅行中の一番気分がハイの時に基準を会わせて話が進んでいました。よほど一生が躁状態の人以外出来そうもないことばかり書いて有ります。初めのころはそういう本を読んだらこう解釈してください

    「面白いこととか、こうしたらいい、あるいはこんな良い旅行をした等のエピソードは、すごく難しくて出来たとしてもたまにしか出来ないことばかりだ。旅行中せいぜい一回か二回それもほんの一瞬にしか起こらないことを集めたエッセンスだ。だから面白いし、良い旅行だと言われる。」

     現実のあなたの旅行は、ハイとロウ、高と低、躁と鬱、軽いと重い、のくり返しです。で、どちらかといえば下の状態の方が最初はお友達です。友達は大事にしなくちゃいけません。

     疲れたら絶対に頑張ってはいけません。旅行ですから。遊びに来ているんですから。考えていたことが出来なくとも許します。疲れてるんですからね。

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