[vol.15]
8月10日(火)札幌〜旭川
9時半、札幌のユースを出て駅に向かう。やはり街のつくりのあらっぽさがめだつ。冬の対策もあるのだろうが、もう少し気を配ればいいのにと思う。いたるところに段差があり、標識や住所表示も不親切な感じがする。以前親戚が札幌に住んでいたので少年のころ何度かきたことがあるがもっと情緒のあるところだった。東京のコピーのようになってしまったがこれが発展というものか?
国道12号線沿いにある駅を地図でさがし、豊幌というところまで電車でいくことにした。今日は12号線一本で旭川をめざす。距離は100Kほどなのでゆっくりと行動。札幌駅をでてしばらくすると北海道らしさが戻りホットした。こちらの住宅は雪対策でトタンが多く、そのせいか屋根がおもしろいかたちをしている。背の高い建物が少ないので木や森がいきいきみえる。
豊幌駅を出ると目の前が国道でさいわいバス停のくぼみもある。歩かずにヒッチ。快晴で日差しがつよく汗がでる。でも本州に比べれば湿気がないぶん楽だ。30分ほどしてランドクルーザが止まってくれる。普段、どうもこのての車はあまりとまってくれないし札幌ナンバーなのででどうせ近くまでしか行かないだろうと少々気落ちした。
ところが乗ってみるとこれが大当たり。アマチャのカメラマンで旭川の近くまでソバの畑を見にいくという。是非つれていってと頼むとよろこんでOKしてくれたばかりか、途中にひまわりの畑もあるから寄りましょうといってくれた。
この近くの出身の人らしく、いろいろ解説してくれてとても興味深かった。石狩川を中心としたこのあたりは平らで遠くに低い山がつらなっている。美唄、砂川、歌志内などはかって炭坑として栄え、石炭を運ぶために鉄道と道路か整備された。直線道路が30Kも続き日本一の長さだそうだ。起伏がなく平坦なのもすごい。これが北海道なのかと感心した。
砂川で12号線を離れ275号線を北上。豊かな田園地帯がひろがる。これも石狩川の恵み。米、花、野菜、メロンなどいろいろなものが栽培されている。北竜町というところにひまわりの畑があった。
町のシンボルマークからしてひまわりでまさにひまわりの町だ。丘一面にひまわりが咲き、観光用にひまわりの迷路まである。ひまわりの中を迷うという感覚は農作業している人の実感なのかもしれない。つくられた迷路なら出口が用意されているが、本当の畑で迷ったらどうするのだろうかと心配してしまう。顔の大きさのひまわりの中にいると人混みにいるような錯覚を覚える。どことなくハッピーで不思議な気分になった。
北竜町から東へ20Kくらいいったところにソバ畑があった。丘一つというものではなく、いくつもの丘が連なって全部がソバ畑。すごい。時期がやや過ぎてしまったせいか白よりも黄色味がかっている。それでも背後の深い森に映え地味な美しさをたたえている。ひまわりのように観光向きではないかもしれないが、カメラマンがこだわる理由が良く分かる。
今日はあまりに天気がよすぎて写真にならないという。雲と光りの影がほしいらしい。時期も遅すぎたと残念がる。でもこちらは思いもかけない見物ができてありがたかった。
美しい森の山道を抜け旭川に入った。石狩川の支流になる川が何本もある。旭川はこうした川の合流点で盆地になっている。条件がよければ大雪山もみえるらしい。
3時旭川駅前に到着。街をすこし歩く。やはり盆地だけあって暑い。日陰をもとめてビルにはいると3500円のホテルの看板。入り口にはISDNの公衆電話もある。迷わずチェックイン。今日はほとんど歩いていないうえに久しぶりにゆっくり休める。こんな優雅なヒッチハイクもたまには許されるだろう。
夕方まで休み、街にでてみた。北海道第二の都市だけあって大きい。道は平坦でよく整備されとても歩き易い。夏を思い切り楽しむ若い女性のスリーブレス姿がはなやかだ。札幌のようなきつさがなく見ていて心が和む。ちょとした滞在で断じるわけにはいかないが、札幌より旭川のほうがしっかり設計してあるような気がする。
沖縄をたつまえからの計画だったジンギスカンを食べにいった。ホテルで教えてもらった松尾ジンギスカンという店で本店は旭川の隣町滝川でジンギスカン発祥の店らしい。ジンギスカンという名前は蒙古のジンギスカンの帽子の形をした鍋をつかうことからきたそうだ。
中央が盛り上がっていて縁は汁がこぼれないように返しがある。回りに野菜を置き、中央に味付けした子ひつじのラム肉をのせる。汁や油分がたれ回りの野菜が煮える仕組みになっている。鉄板焼きのようにカスがこびりつくこともない。なかなかの工夫だ。
うまい。やわらかくてとろけるようだ。さすが本場だ。夢中で6皿をたいらげた。肉料理では4年まえテキサスのエルパソで食べたステーキ以来の感動だった。後で気付いたのだが食べるのに夢中になって写真を撮るのを忘れてしまった。
明日はいよいよ稚内をめざす。あと少しで宗谷岬だ。
Copyright(C)1999 小島春彦
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